債権総論
債権譲渡
1意義・制度趣旨・性質
債権をその内容の同一性を保ちながら、移転すること
投下資本の流動化、債権担保
指名債権譲渡 証券化した債権の譲渡
2指名債権譲渡の制限
イ)性質上の譲渡制限
原則 466―1
1―但し書き 債権の性質が許さざるとき制限される。
ロ)法律上の譲渡禁止債権
例 扶養請求権(881)、恩給受給権(恩給11)、労働基準法上の災害補償を受ける権利(同法83ー2」)
ハ)譲渡禁止特約 466―2
善意の第三者には、対抗できない。
a) 譲渡禁止特約の効力は?
物権的効力を有する。判例通説
債権的効力説
b)466―2の「善意」の意義
譲渡禁止特約のある定期預金債権の譲渡の事案について、銀行預金債権に、明示または黙示の特約が付されていることについて、重過失を認定し、悪意と同一視できるか?
最判昭48・7・19民集27巻7号823頁
こうした特約は、少なくとも銀行取引に付き経験あるものにとっては周知の事実に属する。
c)譲渡禁止特約付き債権の差押え(転付命令)
差押債権者の善意・悪意を問わず、これを差し押さえることができ、かつ、転付命令によって移転することができる(最判昭45・4・10民集24巻4号240頁)。
d)譲渡禁止特約違反の譲渡について、債務者が承諾した場合の承諾の法的意味債権譲渡は、譲渡の時に遡って有効となる第三者に対する対抗力は、譲渡の際に確定日付ある通知がなされていればある。(判例)
譲渡禁止特約付き債権が悪意の譲受人に譲渡された後に、債務者がこれを受諾した場合の効力
1 債務者の承諾以後に、第三者が譲渡を受けまたは差し押さえ・転付命令を受けた場合
債権譲渡有効、対抗力は承諾時より生じる。
法律構成 無効行為の追完
2 債務者の承諾前に、第三者が譲渡または差し押さえ・転付命令をうけた場合
他の譲受人の善意・悪意問わず、第三者が勝つ。
3指名債権譲渡の対抗要件
イ)債権譲渡契約
準物権行為
ロ)債務者に対する対抗要件
譲渡人Aから債務者Bへの通知または承諾が対抗要件とされる(467―1)
二重払いの危険性の防止
通知、承諾は、それぞれ、事実を通知する、事実の認識を表明する、観念の通知
ハ) 第三者に対する対抗要件
467―1は、通知・承諾をもって、債務者「その他の第三者」への対抗要件、同2は、「確定日付ある証書」(民法施行法5)による通知・承諾をもって、「債務者以外の第三者」への対抗要件としている。
通説 1は、対抗要件の一般規定、2は、特別規定
少数説 1は債務者側からの弁済の形式資格、2は第三者間の対抗関係の規定である。
a)指名債権の二重譲渡において、譲受人が共に確定日付ある証書による通知を備える場合の優劣基準
最判昭49・3・7民集28巻2号174頁 到達時説
「民法467条の対抗要件制度の構造から見ると、債権が二重に譲渡された場合、譲受人相後の優劣は、通知または承諾に付された確定日付の先後によって決するべきであり、また、確定日付は通知または承諾そのものにつき必要と解されるべきである。」
確定日付説 旧有力説
b)同時到達の場合の処理
確定日付が同一日付である複数の債権譲渡通知が同時に債務者に到達したときは、各譲受人は、互いに他の譲受人に対して自己唯一の優先的譲受債権者であることを主張することは許されないが、後順位の譲受人に対する関係では先順位の各譲受人が等しく債権者たる地位を有効に取得したものとする。
日付の異なる確定日付ある通知が同時に債務者に到達した事案
債務者に対しては共に全額請求ができる。(判例)
譲受人間
連帯債権説
不真正連帯債権説(通説)
分割債権説
4通知の効力
468ー2
債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって、
譲受人に対抗できる。
5異議を留めない承諾の効力
イ)譲受人の主観的保護要件
抗弁切断の根拠づけ
そうした承諾に公信力を与えたもの 譲受人の善意・無過失が要求される。
ロ)請負契約の解除と異議なき承諾の効力
最判昭42・10・27民集21巻8号2161頁
債務者が異議を留めない承諾をしても、譲受人が右債権が未完成仕事部分に関する請負報酬請求権であることを知っていた場合は、債務者は譲受人に契約の解除をもって対抗できる。
ハ)異議なき承諾と抵当権復活の有無、その場合の抵当権登記流用の可否
債務者の異議なき承諾により譲受人との関係では復活する。
債務者に対する関係では抵当権の復活を認める。
異議なき承諾がされるまでに抵当権の消滅につき利益を有する第三者の利益を保護するため、抵当権の消滅を譲受人に対抗できる。
登記の流用を前提としている。
ニ)異議なき承諾と保証債務の復活の有無
保証人には、異議なき承諾の効力が及ばない。
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