債権総論
債権の消滅 有斐閣双書第5章
序
債権の消滅の分類
(1) 内容実現による消滅 弁済、代物弁済、供託、担保権の実行
(2) 内容実現不能による消滅 債務者の責に帰すべき理由のない履行不能
(3) 内容実現不必要による消滅 相殺・更改・免除・混同
(4) 権利の一般的消滅原因に基づく消滅、時効による消滅、終期の到来、債権を発生させた法律関係の取消・解除、告知、解除条件の成就、債権の消滅を目的とする契約の実現(解除契約、免除契約、相殺契約)など
弁 済
第1 意義
債務者がその内容である給付を実現して債権者の利益を充足させる行為
法的性質
弁済の意思必要説 法律行為説
弁済の意思不要説 準法律行為説
第2 弁済の提供
1 債務の本旨にしたがった
合意、事実上の慣習、任意規定
2 現実または口頭の提供
口頭の提供
取立債務
債権者の予めの履行拒絶
明白な履行拒絶に際し、口頭の提供は必要か、
口頭の提供は不要
賃貸借契約の賃料改定にあたり、どうか。
第3 第三者の弁済 474条
原則 許される
例外 許されない場合
法的利害関係
有る 性質上認められない
双方当事者の意思に反する
無し 債務者に意思に反している
第4 弁済による代位(499条から504条)
第三者から債務者に対して、債権者の権利の行使
求償、担保権の移転等
法律上の利害関係がある場合 法定代位 500条
法律上の利害関係がない場合 任意代位 499条 債権者の合意が必要
代位の範囲
代位者相互間の関係 501条
保証人
物上保証人
担保権者
抵当不動産の第三取得者
弁済受領者
原則 受領権者
債権者
代理人
取立権者
例外 権原のある者への弁済 外観法理
準占有者への弁済(478条)
受取証書の持参人への弁済
例 債権の事実上の譲受人、
表見相続人
預金証書と印鑑の持参人
第5 充当
指定充当 488条
法定充当 489条
弁済の証明
受取証書交付請求権
債権証書返還請求権
代物弁済 482条
意義 債務者が債権者の承諾によって本来の給付にかえて、他の異なる給付を現実になすことにより本来の債権の消滅が生じる、債権者・弁済者間の契約のことをいう。要物契約である。
要件
(1) 債権の存在
(2) 異なる給付
異なる給付は現実になされることを要する。
(3) 給付にかえて なされること
「給付にかえて」と「給付のために」との相違
効果
債務は消滅する。
供託(494条―498条)
意義 弁済者が弁済の目的物を債権者のために供託所に寄託して、債務を免れる制度(第三者のためにする契約)
要件
(1) 可能
(2) 供託原因
受領不能
受領拒絶
弁済者の過失なくして債権者を確知できない
(3) 内容と同一
方法 債務者または第三者が債務履行地の供託所にておこなう 495条 。 供託後通知
効果 494条 消滅
取り戻し権 496条 債権者が供託を受諾しない。供託を有効としたる判決の確定以前。
相 殺
1意義
相殺 (単独行為としての)
相殺契約
2 要件
相殺適状
@ 有効に成立した債権が相互対立性を具備していること (mutuality)
論点
除斥籍期間の経過により消滅した債権を自働債権として相殺できるか
時効によって消滅した場合には 相殺できる。508
除斥期間経過後の債権 508類推(大判昭3・12・12民集7巻1071頁)
時効期間経過後の債権、除斥期間経過後の債権
最高裁判例昭和51・3・4 請負工事契約で、瑕疵修補に代わる損害賠償債権と請負代金債権との相殺
A 同種目的を有すること
金銭または代替物を目的とする相殺
金銭が一般的。
B 双方債権が弁済期にあること 但し現在では解釈により自働債権が弁済期にあれば受働債権は弁済期にある必要はないとされている。
以上505条1項
C 相殺を許す債務であること(505条1項但書)
許されない場合はどのような場合か。
例
金銭または代替物を目的としない場合には、この要件でも排除される。重複記載
自働債権に同時履行の抗弁権が付着していること
3 効果
遡及効
相殺の遡及効(506ー2)は解除にまで影響を与えるか。
相殺以前に生じた事実(弁済による消滅や解除)を覆す効果はない。
相殺は許されなくなる。
D 相殺禁止
合意による禁止 505条2項但書
法律による禁止
3 方式
当事者の意思表示
4 効果
遡及効
5 相殺の禁止
合意による禁止
法律による禁止
@ 受働債権が不法行為から生じたとき
根拠 現実弁済、不法行為の誘発の防止
同一不法行為から双方に不法行為債権が発生した場合に相殺できるか
同一事実にもとづいて生じた相互の不法行為による損害賠償債権
許されない(最判昭54・9・7判時954号29頁)
反対学説
双方に過失がある限り、交叉的な責任であるから、相殺は許される。
A 受働債権が差押禁止債権 510条
恩給、扶助料、労働者の賃金
B 相殺と差押 511条
AがB銀行に対して定期預金債権を有し、他方B銀行はその定期預金債権を宛にしてAに対して貸し金債権を有していたときに、Aの債権者CがAの右定期預金債権を差し押さえた場合、B銀行は右貸付債権を自働債権としてAの右定期預金債権と相殺することができるか。
B銀行の相殺による担保的機能の期待
Aとの間で相殺の予約ないし期限利益喪失をつけている。
@双方の債権がともに差し押さえ前に弁済期が到来
または弁済期に定めがない
相殺は対抗できる
A差し押さえ時、Bの貸し金債権の弁済期到来、
Aの預金債権の弁済期未到来
相殺は、対抗できる。
BBの債権の弁済期未到来で、Aの債権の弁済期が到来しているとき
Bの債権の方がAの債権よりも先に弁済期が到来する場合
相殺は、対抗できる(最判昭39・12・23民集18巻10号2217頁)。
CBの債権の方がAの債権よりも後に弁済期が到来する場合
許されない(最判昭39・12・23民集18巻10号2217頁)。
511の文言解釈から、Bは、その反対債権が差し押さえ後に取得されたものでない限り、両債権の弁済期の先後を問わず、相殺適状に達しさえすれば、相殺できる。
相殺予約等の特約も、差し押さえ債権者に対しても効力を有する。
(最判昭45・6・24民集24巻6号587頁)
学説
相殺の担保的機能と差し押さえの効力との関係から、39年判決を
支持する学説が多い。
更改
免除
混同
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